あなたは、普段どんな砂糖をお使いでしょうか。
ダイエットや健康志向により悪者にされがちな砂糖ですが、料理やお菓子作りには欠かせない調味料。正しい知識で、適切に使っていきたいものです。 今回は、体にやさしく栄養もあり、さまざまな料理に使える万能な「てんさい糖」の魅力にせまります。意外と知らない砂糖の色の由来や選び方のポイントについても解説します。
【目次】
てんさい糖(甜菜糖)とは?原材料は?
てんさい糖とは、甜菜(てんさい)から作られる砂糖。一般的には、甜菜の蜜を含んだ「てんさい含蜜糖」のことを「てんさい糖」と呼んでいます。
甜菜は、見た目が大根やカブのような形をしているため、砂糖大根やビート(SUGAR BEET)とも呼ばれていますが、ほうれん草と同じヒユ科の植物。白い根を細かく切って煮出すことで、甘味成分を抽出します。
日本の生産地は、北海道のみ。生育期間は約6ヶ月で、春先に種をまき、秋秋頃に収穫したものを、生産地に近い工場で製糖します。
甜菜1個の重量は、大きいもので1,000gほど。糖分は約17.0%ですから、この場合は1個から170g前後の砂糖が出来あがります。
参照:日本甜菜製糖株式会社 お砂糖の原料は?/https://www.nitten.co.jp/service.html 砂糖はこうしてつくられるNo.1/https://www.nitten.co.jp/sugar1.html
てんさい糖(甜菜糖)の栄養素は?
一般的に使われる上白糖は99%が炭水化物ですが、てんさい糖は糖蜜が含まれるので、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム、亜鉛などの天然のミネラルが含まれています。
ミネラル成分は、きび糖や黒糖に比べると少ないですが、てんさい糖には、ラフィノースやケストースといった「天然のオリゴ糖」が含まれているのが特徴です。
オリゴ糖は、消化酵素でほとんど分解されず、そのまま大腸に届きます。このため、糖質としてからだのエネルギーになりにくく、摂取しても血糖値の上昇にほとんど影響しません。腸内でビフィズス菌などの善玉菌の栄養源になってくれます。
株式会社パールエース/「オリゴ糖」って何だろう?/https://www.pearlace.co.jp/know-and-fun/tips/post-42.html
てんさい糖(甜菜糖)と他の砂糖は何が違う?
砂糖の原料は、「サトウキビ」や「てんさい」です。
これらの原料や精製(砂糖を作る過程で不純物を取り除き、甘みだけを抽出する作業のこと)、製造方法の違いなどで、いろいろな種類の砂糖ができあがります。
大きく分けると、上白糖やグラニュー糖のような「精製された砂糖」と、きび糖やてんさい糖のような「完全に精製されていない砂糖」の2種類があります。
★分蜜糖(精製糖)
「サトウキビ」「甜菜」の糖蜜を結晶と分離してつくる、ショ糖だけを精製した砂糖のこと。原料やメーカーによって若干の差はありますが、原料がサトウキビでも甜菜でも、ほぼ同じものができます。
上白糖・グラニュー糖・三温糖・ざらめ糖など
精製された白い砂糖の方が甘みはハッキリとしていますが、不純物を取り除く精製工程で栄養素はほぼ失われています。
上白糖は、結晶が細かくしっとりとした砂糖。色は無色透明で甘みが強く、料理に頻繁に使われます。
グラニュー糖は、最も純度が高く、サラサラしてすっきりとした甘さ。お菓子やコーヒーシュガーなどの食品に使われます。
三温糖は、色は薄い茶色、甘みが強くコクがあり、和食に頻繁に使われます。
★含蜜糖
「サトウキビ」「甜菜」のショ糖(砂糖の主成分)の結晶だけでなく、蜜を含んだ状態で乾燥させた砂糖のこと。原料由来の様々な成分を含んでいます。
黒糖・きび糖・てんさい糖など
てんさい糖のように、糖蜜を含んでしっとりしている砂糖は、自然な甘さとまろやかな味が特徴。見た目は茶褐色で、ミネラルやビタミンを含みます。中でもてんさい糖は、オリゴ糖を含み、お腹にやさしいと言われています。
黒糖(黒砂糖)は、サトウキビの絞り汁をそのまま煮詰めたもの。
きび砂糖はサトウキビの絞り汁から、ある程度の成分を除いた糖液を煮詰めて作られたもの。精製途中の砂糖液を煮詰めて作られているため、「骨炭」が使われていることがあり、完全なヴィーガンということは難しいでしょう。
さて、ここで「三温糖は茶色なのに、なぜ分蜜糖?」と疑問が生まれますよね。
実は、三温糖は、グラニュー糖や上白糖を取り出した後の糖蜜から作られます。煮詰め・結晶を取り出す工程でついたカラメルの色で、蜜を含んだまま高温で乾燥させた天然の色ではありません。
栄養が残された完全に精製されていない砂糖=茶色の砂糖と思い込んでいませんか?白色の砂糖はすべて体に悪く、茶色の砂糖ならば体に害がないというイメージが過大になり過ぎているようです。甜菜から作られる砂糖にも、精製された商品があることを知っておきましょう。
参照:大東製糖株式会社/含蜜糖と精製糖/https://daitoseito.co.jp/topics/sugar_guide
てんさい糖(甜菜糖)を選ぶメリット
甜菜が原料の白砂糖やグラニュー糖はミネラルやオリゴ糖は期待できませんが、精製されていないものは栄養が残っています。こうした「てんさい糖」を選ぶ利点は、5つあります。
・天然ミネラルが含まれている
・天然のオリゴ糖が含まれている
・GI値が低く、血糖値の上昇がゆるやか
・体を温める効果があるとされる
・コクがあるのに、あっさりとした甘さで、料理やお菓子作りに最適
てんさい糖に関しては、腸内環境を整える天然のオリゴ糖が含まれているのが大きなメリットです。また、上白糖はGI値109に対して、てんさい糖のGI値65。血糖値の上昇が緩やかなのもグッド。
気温の高い沖縄で多く作られているサトウキビは、身体の熱を冷ますと言われますが、寒い場所で栽培される甜菜は、体を温める効果がある甘味料として、マクロビオティックでも推奨されています。
まろやかでさっぱりとした甘さなので、飲み物にそのまま使ったり、煮物料理のコクや照りを出したりと、幅広く利用できます。
参照:ホクレン/てんさい糖8つの理由/https://www.tensaito.com/reason/
てんさい糖(甜菜糖)のカロリーは?
WHO(世界保健機関)のガイドラインでは、1日の糖分摂取量を10%未満、可能であれば5%未満に抑えることが勧められています。5%というと一般的な成人なら1日あたり約25g、小さじ5杯分の砂糖に相当します。
てんさい糖の100gあたりの糖質は88.6gで、カロリーは380kcal。この数値だけを見ると、
ほかの砂糖と同様に、摂りすぎには注意が必要です。
参照:日本食品標準成分表2020年版(八訂)/てんさい含蜜糖https://fooddb.mext.go.jp/details/details.pl?ITEM_NO=3_03030_7
砂糖の選び方
健康食品の店やマクロビオティックで推奨されている「茶色い砂糖」の安全なイメージ、白い砂糖への過剰反応は、誤った認識を生んでいます。
基本的な砂糖の選び方は、甘味や風味、用途で使い分けること。健康目的であれば、栄養を少しでも含んだものや低GI値のもの、ヴィーガンなら精製過程で動物の骨が使われないものが基準になるでしょう。
てんさい糖については、「遺伝子組み換え」と「農薬」の問題がときどき話題になります。
日本では、フランスやオーストリアなど、海外から輸入された「てんさい糖」が遺伝子組み換え種を使用しているのかの表示義務がありません。また、日本では遺伝子組み換え種での商用栽培は認可されていません。
たとえば、てんさい糖の有名メーカー「ホクレン」によると、農薬の適正使用と管理の徹底以外にも、精製の過程で残留農薬が取り除かれるため、てんさい糖から残留農薬は検出されていないそうです。国内産やオーガニックの表記があるものを選ぶのが良さそうですね。
参照:ホクレン/てんさい糖/https://www.tensaito.com/policy/
まとめ
種類豊富な砂糖の中でも、自然由来の色味と上品な甘味、体にやさしくヴィーガンもOKの「てんさい糖」を解説しました。
日本で販売されているてんさい糖は、すべて北海道で生産・加工されたもので、安心感がありますね。また天然のミネラルやオリゴ糖などの栄養を含んだてんさい糖は、料理やお菓子、飲み物など、オールマイティーに使える便利さもメリット。
美容や健康維持のために、どんな砂糖を使えばよいのか迷っている方は、精製されていないてんさい糖の低GI値や腸へのアプローチにも注目してみてください。
アインソフのパティスリーでも、安心安全な「てんさい糖」を使って、ヴィーガンの方だけでなく誰もが楽しめるお料理やお菓子をお届けしています。
「白砂糖」についての記事は別で詳しくまとめていますので、下記コラムも併せてご覧ください。
直営店舗店頭でも焼き菓子など販売していますので、ご来店の際、ぜひご覧ください。
おうちで作りたい方は、てんさい糖を使ったお菓子のレシピもいろいろアップしていますので、ぜひアインソフYouTubeを覗いてみてください。